NPO法人 緑区子どもサポートセンター

  自分だけの手作りおもちゃ


                                (2010年5月1日)


5月1日(土)の「土曜あそび塾」は「自分で創作!手作りおもちゃ」ということで
昨年もご指導していただいた奥津さんご夫妻に佐倉から来ていただきました。

奥津さんは佐倉市で木のおもちゃの創作・販売や造形教室「アトリエ・そうわーくす」を主宰しています。
「アトリエ・そうわーくす」には優しいぬくもりの木のおもちゃが沢山あります。

去年も「土曜あそび塾」のおもちゃ作りに参加した子たちは「テルさん!」「トモさん!」とお二人のことを覚えていました。
今期の「土曜あそび塾」は21名と人数が増えたため、土気の事務所では手狭になり
初めて「おゆみ野公民館」を使うことになりました。
けれど、この日はゴールデンウィーク中の土曜日ということもあり、帰省などの欠席者が多く12名の参加となりました。

今日のおもちゃは「ジャンピング輪投げ」です。
初めに「テルさん」が作り方を教えてくれます。
おもちゃの話もしてくれました。
プラスチックやブリキのおもちゃは大量に作れるけど、これからみんなが作るおもちゃは大量には作れません。
それはひとつひとつが違うからです。
においも重さも木目も全部違ったものができます。
今日使う材料は米栂(べいつが)という木の板です。
建売住宅の家でよく使われる安い木材だそうです。
木目がはっきりしています。
木目がはっきりしているということは、春夏秋冬がある地域で育った木ということがわかります。

「テルさん」が子どもの頃、おもちゃは自分で作って遊んでいたので、カッターナイフはいつも持ち歩いていたそうです。
でも今はナイフなんて持ち歩いていたら、それだけで大変ですね。
いろいろな事件があった時はナイフの使用も禁止になりました。
でも、痛い思いをしないで大人になるほうが心配!とテルさんは言います。
造形教室ではけがをすると、おめでとう!と言っているそうです。

そんな話の後、まずはノコギリで1本の棒を切り4本にするところからおもちゃ作りが始まりました。
のこぎりを使うのは初めてという子も多く、低学年にはノコギリは大仕事でした。

ノコギリの刃はなかなか木に食い込まないし、切ろうとすると今度は木がぐらぐら動いて左手で押さえるのも簡単ではありません。勇輝くんはなかなかノコギリの刃が入っていかず、とても時間がかかりました。
早い子は短時間で切れるのに一番最後まで頑張りました。
「もうできないよ!」と言うんじゃないかと何度も顔をのぞきこみましたが、最後まで弱音は吐きませんでした。
頑張ったね。

ノコギリの後はやすりがけです。
集中してやすりをかけていくと木は優しい肌ざわりになり暖かさを感じます。
ノコギリで切った棒も丸くなり、手で触れても痛くありません。
さきちゃんとりかちゃんの棒は苦労してノコギリで切った跡が感じられます。
トモさんが「頑張って切った〜!って感じがするからこのままがいいね。」と言ってくれました。
やすりがけは根気がいる作業でちいさな子どもたちにはとても大変ですが、
少しずつ優しくなっていくおもちゃはやっぱり自分で作ったおもちゃという思いを強くさせてくれます。

ジャンピング輪投げの形がだんだん整い、何人かの子どもがあそび始めたころ、
テルさんが「アトリエ・そうわーくす」のことを話してくれました。
そうわーくすのSOWとはSence Of Wonder ・自然を感じる心という意味だそうです。
木がぶつかると聞こえるカンカンという木の音、木のにおい、肌ざわり、触感、地球を感じるということ。
宇宙でジャンピング輪投げをしたら、ゴムの輪は宙に浮かんで遊べませんね。
重力があるから遊べるんですね。

でも、世の中には「自然のような物」がいろいろあるよね。
その時、そうたくんが手を挙げて「フローリング!」って言いました。
去年のあそび塾の時のテルさんの話を覚えていたんだね。
トモさんが手さげ袋からフローリングの板を出して見せます。
木目があって、木の色をしていて遠くから見ると本物の板のように見えます。
でも、フローリングは石油から作られたプラスチックです。
自然の木は雨に濡れると重くなったりしますが、バーチャルリアルティの物は何も変化しません。

テルさんは「おじさんの話は聞き流していいんだよ。
なんかの時にこんな話を聞いたなって思い出してくれればいいんだからね。」と言っていました。
「土曜あそび塾」ではそういう大人の思いに子どもが触れることをとても大切にしたいと思っています。

わたしも高校の時の現代国語の先生が1年間、戦争で人が受ける心の傷について何度も何度も話していたのを思い出します。
大学の国際関係論の先生は、べトナム戦争で一般市民がどれほど悲惨なめにあったかをちいさな身体で必死に話してくれました。
今になって思えば、それが自分にとっての平和への考えの出発点だったと思います。
自分で作った世界でたったひとつのおもちゃでたくさん遊んでほしいなと思うとともに、
いつか今日の話を思い出してくたらいいなと思います。