NPO法人 緑区子どもサポートセンター
   第47号 平成26年9月

人への信頼を育む「子どもキャンプ」



 朝夕涼しくなり、すっかり秋の風情になってきました。
夏にキャンプへ出かけられた方も多いことと思います。
あなたはキャンプのどんなところに魅力を感じていますか?
自然に触れること、日常を忘れること、友達とたくさん話すことなど、人それぞれの楽しみ方があると思います。
緑区子どもサポートセンターでも、三泊四日の「子どもキャンプ」が奥多摩で行われました。
このキャンプの特徴や魅力について、活動を支える青年たちに聞きました。


子どもキャンプの特徴
 参加できるのは小学四年生から中学三年生。
日常を離れて、自然の中でたくさん遊ぶキャンプです。
子どもたちには班ごとに高校生以上の指導員が付き、大人や青年のスタッフがそれをサポートします。
高校生や青年を中心とした実行委員会が企画し、運営するというのが、大きな特徴です。
また、参加者全員やグループでの集まり、
デイキャンプ、保護者会などで、参加者が事前に何度も顔を会わせて話す機会があります。
そのため、キャンプ当日には参加者同士が顔なじみになっているのも特徴のひとつです。


子どもキャンプの魅力
 子どもキャンプの魅力として、まず挙げられたのが異世代との交流でした。
子どもの頃はお兄さんやお姉さんに会えるのが楽しみで参加していた、と言う青年もいました。
小・中学生にとって、高校生・大学生は普段あまりかかわりがないけれど、
年齢が近いので仲良くなりやすいし、憧れの対象です。
また、サポートセンターの青年達は、年齢が違っていてもお互いに敬語を使わずあだ名で呼び合う仲。
その楽しい雰囲気は子ども達にも伝わっていると思います。
キャンプの間、憧れの青年たちと寝起きを共にする中でたくさん話を聞いてもらうこと、
本気になって一緒に遊んでもらうことは本当に楽しいことでしょう。
異世代とのかかわりは一昔前なら当たり前の光景だったかもしれませんが、
今日では貴重な体験だと思います。
 また、このキャンプは、あらかじめ決められた計画に沿って活動するのではありません。
参加者一人ひとりがキャンプを作り上げる一員として意見を出し、決めていくのです。
これまでキャンプ場ではないところでキャンプをするために全ての荷物を運ぶなど、
子ども達だけではちょっと難しい活動内容もありました。
でも、青年と共にどうすれば実現できるか話し合い、苦労しながら実現させていきました。
この過程に醍醐味があり、大きな魅力となっています。
子ども達も自分達がやりたいことだから、おのずと主体的に取り組みます。
また、困難を乗り越えて作り上げていくことで、自尊心も育っていくのだと思います。
と言っても、青年はなにも用意をせず成行きに任せているのではありません。
事前に綿密な計画立てつつも、それをその時々に合わせて柔軟に変更しているのです。
運営側としては、自分たちで考えた計画に従って動いてもらった方が楽に違いありません。
でも、そうしてしまうと、思いっきり楽しめる機会や成長する機会を子ども達から奪うことになります。
だから、一見無駄にも思えるようなこのスタイルが大切なのだと思いました。


青年とその想い
 今回、青年の話にハッとさせられたことがいくつもありました。
「子ども達が『楽しかった』と言う。
けれど、それが『やりたい放題やっても怒られないから楽しい』ということなのであれば、
自分達の方向性が間違っていると思う。
」と自由と無責任の違いに言及する青年。
また、「子どもをあんまり褒めないな。
褒める・褒めないという関係じゃないから。
そうじゃなくて認めるっていう感じ。」と、
さらりと言う青年。
相手が子どもだからと軽く見るのではなく、人として尊重しているからこそ出る言葉なのでしょう。
「普段なら、空気読んでやらないようなことをできるのがこのキャンプ。
だから、それを守りたい。」
周りと合わせることを良しとされがちな、子ども達の状況について熱く静かに語る青年。
子どもに向き合う姿勢というものが、理論としてではなく、
実体験として青年たちの体に染みついているのだと思いました。
こんな素敵な青年たちは、子どもの頃からキャンプに情熱を燃やすタイプだったのでしょうか。
実はそうでもないようです。
小学生のころはなんだかよくわからずに参加していた、友達とのおしゃべりが楽しいから行っていた、という人たちも。
それが年数を重ね、中学生・高校生になってくると俄然おもしろくなってきたそうです。
一体何が変わったのでしょう。


任されることで起こる変化
 中学生になると、プログラムの一部を任せてもらえるようになります。
「中学生企画」と呼ばれていますが、内容、時間配分、進行など、一つの企画を数人の中学生で行うのです。
内容はきもだめしやゲームなど様々ですが、
この経験を経ることで企画の大変さや面白さ、
企画側の意図、キャンプの流れがわかるようになったと話していました。
 さらに、高校生になると参加者ではなく、指導員として参加するようになります。
班の子ども達と寝起きを共にし、健康と安全を守りつつ楽しいキャンプになるよう導いていく、責任のある立場です。
保護者会では子どもたちの親とも直接話をします。
高校生、大学生の目には、保護者がとても大きな存在に映るようです。
初めて会う時には、気後れすることもあると思います。
また、時には親と子どもの意見が食い違い、 間に立たされることもあるそうです。


築かれていく信頼関係
 大人のスタッフが一つの話を聞かせてくれました。
計画内容のひとつに不安のあった保護者が「小学生にはまだ早い内容だ」と指導員に指摘をしました。
それを受けて「そうですか。
ではやめます。
」と答えてしまうのは簡単な事でしょう。
でも、それでは子どもはがっかりしてしまうし、青年への信頼感も育ちません。
この青年は、子ども達ともう一度集まって「こういう心配をしている保護者の方がいるけど、どうする?
」と相談しました。
じっくり話し合って、子ども達は「キャンプの間だけで、
終わったらちゃんと元に戻すと約束をするからお願いします、と親に言う。
」と結論を出し、やりたいことは実現できたそうです。
このようにして子どもと青年、青年と親、親と子どもの間で信頼関係が築かれていくのだと感じました。
また、キャンプが子ども達にとって「やりたいことをできる場」になるのだと思います。
このようにちゃんと聞いてもらった子どもは、
その印象に残っているから、指導員になった時に子どもと向き合って意見を聞けるという話でした。
 信頼する指導員が見守ってくれているという安心感の中で、子ども達は暑さにもめげることなく活動し、
一回り大きくなってキャンプを終えます。
そしてまた、プレッシャーがある中でも指導員が頑張れるのは、
見守り、助言し、バックアップしてくれるスタッフがいるからなのだと思いました。

青年たちはそれぞれ個性と情熱があって、みんなとても素敵です。
特に、指導員からさらに回数を重ねて指導員長や実行委員長を経験した青年たちは、
視野が広がり、人間的に深みを増しているように思います。
お互いに意見が違っても相手を否定しないで聞いている姿がとても印象的でした。
だからといって、言いたいことを言わずにすませるのではなく、互いに尊重しあっている姿。
表面的な付き合いでなく、本当の仲間ってこういうことなのだろうと羨ましく感じました。
こんな関係を作れるのも、このキャンプの魅力なのだと思います。
青年達は、伝統あるキャンプの本質を残すために、今、何をしたらいいのか、
とすでに来年のことも話し合っていた様子。
今回のお話は、家庭での育児に通じることが多々あり、自身の子育てにも活かしたいと思いました。
(土井)