NPO法人 緑区子どもサポートセンター
   第39号 平成24年 9月

1歳児の発達と親子の関わり方

                     臨床心理士 永松未生


7月に「おゆみ野中央子育てリラックス館」で行われた講演会の内容をお送りします。


■規則ただしい生活の大切さ

2か月くらいの赤ちゃんは、おっぱいを飲んでは寝て…を繰り返し朝も夜も関係ない寝方をしていますが、
1歳前後になってくると寝る時間が決まってきて生活リズムが整ってきます。
朝起きて朝日を浴びると、脳下垂体からコルチコステロイドというホルモンがでてきます。
「今日一日の活動を頑張るぞ!」という指令が出てスイッチが入ります。
それから12〜13時間後にメラトニンというホルモンが出ます。
夜メラトニンが出ると脳の中心部の体温を下げて「さあ夜になって静かに寝ましょうね。」というサインを出します。

脳の中の熱を外へ出そうとするので、おでこや手の表面が温かくなってくるのです。
そのホルモンが出てくると、寝付きやすくなり寝ている間にたくさんメラトニンが出ます。
メラトニンが多く出ると、身体の調子を調えて成長を促します。
メラトニンは一歳〜五歳の間によく出て急激な成長の間に脳を整えてくれるのです。

メラトニンのもう一つの重要な働きはアンチエイジングです。
先進国の子どもの初潮が速くなっていると言われて久しいですが、
第二次性徴が前倒しになると、老化が早まり成人病にかかるリスクが高くなるという調査報告もあります。
ですから、就学前のこの時期に、しっかり規則正しい生活をすると、
その後の人生の大事な基盤を作れることになります。
子どもの寝かしつけは大変ですが、子どもの将来のために今頑張りましょう。

 (参照 こどもを伸ばす「眠り」の力   神山 潤 著)

■あそびの大切さ

子どもにとって、遊びはとても大切です。
成長を促す役割があります。
言葉をじょうずに使えない子どもにとっては、遊びを通して気持ちを伝えたり、
発散したり、コミュニケーションのやりとりの基盤を作ります。

新しいおもちゃを与えることや、テーマパークに連れていくことは、
子どもの発達を促すためには特に必要なことではありません。
じゃれつき遊びなど目の前にいるこの人とやり取りしたいな…と思えるような遊びが、
子どもにとって発達を促す良い遊びと言えます。

■テレビ・パソコン視聴について

アメリカの小児医学会はテレビ・パソコンなどの視聴4時間以内(小・中学生を含む)にしましょうと提言しています。
幼児ではもう少し短いほうが良いと思います。
好きな番組を見せたり、家事の忙しい時間帯にテレビをつけたり上手く利用するのはかまいませんが、
日中つけっぱなしにするのはやめましょう。
見るときにつけて見終わったら消す習慣をつけましょう。
それから、メディア(テレビ,DVD、ビデオ、携帯電話、パソコン、ゲームなどの総称)に
触れる主導権は保護者が持つことが何よりも大切です。
夜のテレビやゲームの強い光は、メラトニンの分泌を抑える傾向があります。
朝はお日様の光で明るく、夜は暗く!を心掛けましょう。

■育児ストレスについて

育児中の母親は妊娠、出産、授乳でホルモンが劇的に変動しています。
ホルモンは情緒と深くかかわっているので、気分の落ち込みなど、育児ストレスは誰にでも起こりうるものです。
自分の身体をマネジメントするつもりで、うまく休養や治療、ストレスへの対処をしたいものです。
女性の不調に有効な東洋医学やアロマ等もお勧めします。

 先生に対しての質問の中から

Q)お友達とうまく関われるようになるのはいつごろからですか?
A)人間に興味を持つのは大切なことです。
  関わりは少しずつ上手になっていきます。
  子どもの気持ちを代弁してあげるといいですね。
  3、4歳になってはじめて社会性のスタートです。

Q)この時期どこまで叱っていいのでしょうか?
A)1歳児は記憶力の容量が少なく、何を叱られているのか理解できません。
  保護者ができることとして・・・
   ○危ないものを取り除いて、環境を整えることによって危険を減らす。
   ○子どもは親の想定を超えた行動をする。(よじのぼったり危ないものに手を伸ばすなど)
     ベストはその危ない行動を即座に止めて「あぶないからだめよ!」と声をかける。
   ○「これはやらないよ!」と言葉は短く、周りの大人が身体を動かして、その行為を止めてあげること。
   ○繰り返し、繰り返しが徐々に実を結びます。

Q)最近私を叩いてくるので叱りますが、叱られている認識がないのですが?
A)暴力に対してはやられる前に止める、逃げる。
  叱るときは高い声より低い声の方が効き目があります。
  短い言葉でいつもと違う低い声で、母が怒っているメッセージを伝えます。
  叱った後はちやほやすると、遊んでくれたと勘違いするので、気をつけましょう。

Q)食が細くて困っています。
A)幼児期の食事で困っている人はとても多いです。
  子どもの時の方が味に対してより敏感になっています。
  動物的な感覚としては、新しい味や物に対する反射的に拒絶したくなるような反応をする仕組みがあります。
  食べられるようになるということは、それを乗り越えていくということなので、
  まずは親が何でもおいしそうに食べましょう。
  お母さんのストレス軽減方法として、小さくても、うんちが出ていて、育っていればいいや!と思ってみる。
  食べなくてもいいや!と思ってみる。
  両親がおいしそうに食べていて、人への興味が出てきたら、そのうちに受け入れるようになってきます。

Q)祖父母がお菓子を早く与えたがるので困っています。
A)孫かわいさに与えたくなる気持ちは理解できますが、
 まだ、子どもの腸内環境は整っていないので、チョコレートなどのお菓子はあげないほうがよくて、
 そこは母が主導権を握ってもいいと思います。


今回は1歳児を対象とした講演会をお願いしました。
緑区の子育てリラックス館では2歳児対象の心理士講演会や
兄弟の育て方に関する心理士講演会を予約制にて開催しております。
参加するためには事前に来館して登録する必要がありますので、詳しくは直接お問い合わせください。
 

      
(まとめ 川本泉美)