NPO法人 緑区子どもサポートセンター
   第35号 平成 年 月

〜子どもの事故を防ごう〜

  防げる!子どもの事故   まなこどもクリニック   原木 真名先生
    
子育てリラックス館で行なわれた講習会でまなこどもクリニックの原木真名先生から、「子どもの事故」のお話をいただきました。今子育てをしている多くの方に知っていただきたい内容ですので、紙面を借りて掲載させていただきます。


多くのお子さんは健康で、風邪をひいたとか熱を出したというのはあるでしょうけれど、この子の命が危なくなるというのは絶対にないと思っていらっしゃると思います。
実はそんなことはなくて紙一重で子どもの命がなくなることがあります。

■誤飲による事故

ホームページで調べるとさまざまな事例が載っていますが、最近起きた事故として1歳8ヶ月の女の子が、おにいちゃんがもらったスーパーボールを口に入れて窒息して亡くなったというのがありました。
同じく3才の男の子が2個口に入れて、お母さんが危ないから出しなさいと言ったので1個は出したのですがもう1個を飲み込んでなくなったという例が出ていました。
こんな簡単なことで子どもが命を落とすのです。

窒息の例で言うと「あめ」もあります。
けっこうあめを簡単になめさせているのが怖いと思うのです。
クリニックにも5歳のお子さんが「あめをなめていて急に苦しみだした」と来た方がいました。
その時はもう飲み込んで元気になっていましたが、あめとかタブレットなど喉に入ると窒息しないまでも苦しい思いをします。大きいものだと詰まって窒息して死亡します。
プチトマトの窒息例もあります。
保育園の園庭に栽培していたプチトマトを口に入れてすべり台で遊んで詰まってしまった。
病院に運んで詰まっていることがわかったけれど、死亡してしまいました。
こんにゃくゼリーは有名ですがそれ以外でも口に入れたもので詰まってしまうことはしばしばあります。

亡くなってしまう事はまれですが、そういうことがないようにどうしたら良いかが大事になります。
スーパーボールなどはお子さんが赤ちゃんだけの時には家にないと思いますが、年上の兄弟がいる場合には身近にあることが多いので、それを飲み込んでしまったりします。
家の中の状態を定期的に見まわすと良いと思います。
子どもの目線は低いので、低い目線で小さな物を見つけます。
ですからそういうものは子どもの目線に入らない高いところに置くように注意が必要です。
お姉ちゃんのおもちゃを飲み込んだことに気がつかないままにしていて、その後次第に肺の機能が悪くなってしまい、診断がついたときには手遅れで、片方の肺を摘出しなければならなくなった例もあります。
プラスチックはレントゲンにうつらないので、少し咳が出るからと言って胸部レントゲン写真をとっても診断がつきにくい場合があります。金属ならば、小さくてもわかるのですが・・・
赤ちゃんだけだと気をつけますが、兄弟が増えていく中で、お兄ちゃんお姉ちゃんのおもちゃなどが赤ちゃんの危険にならないように注意が必要だと思います。

タバコとお酒
0歳を除いた小児の死因の1番は不慮の事故です。
ほとんどの子どもは小さい事故は経験しています。
ですから「気をつけましょう」というのは意味がなく、命を落すような重大な事故にならないようにすることが大切になります。小さいものを口に入れないようにするというのは簡単ですが、24時間そばについていられないしお母さんが寝ている間に起き出してしまう事はある。
具体的に事故を起こさないような予防をすることが大事です。
タバコの事故も誤飲の中では多いです。
子どもがいる同じスペースでタバコを吸うというのは良くない事です。

今放射能のことが話題となっていますが、タバコ1日1箱吸っている人は放射能を年間100ミリシーベルトなら許容される原発作業員の発ガン率と近いです。
子どもへの影響もあります。
子どもの目の前でタバコを吸うのはやめるべきです。
タバコの事故で1番怖いのは、ジュースの空き缶にタバコの吸殻を捨てることです。
子どもが間違って飲んでしまうのが怖いです。
まさにニコチンジュースですから。顔が蒼白になって動悸がして冷や汗かいてという症状が現れます。
タバコ1本を食べるという事は少なく、たいていは食べ始めると気持ち悪くなって吐いてしまいます。

割と多いのがお酒を飲んだというケースです。
今ジュースと間違えるような酎ハイが売られていて、冷蔵庫に入っているのを1本飲んでしまったという事があります。
血糖値が下がって痙攣をおこすのが怖いです。

■チャイルドシートは確実に

交通事故防止にはチャイルドシートですが、これは皆さんつけていらっしゃると思います。
時速40キロでコンクリートの壁に衝突した時の衝撃は3階建てのビルから自動車を落した時の衝撃と同じです。
また10キロの子どもを抱っこして40キロの速度で衝突した時には子どもの体重の30倍、つまり300キロの力がかかります。
そうすると赤ちゃんを抱っこして後ろ座席に乗ってシートベルトをしていないと車がぶつかった時にお母さんの体が赤ちゃんを押しつぶすことになります。
「チャイルドシートを嫌がるんです」と言われる方がいますが、命にかかわることなので嫌がって乗らないのだったらお出かけはやめるくらいの断固とした態度が必要です。

■水による事故

水による事故の多いのがお風呂による事故です。
さっきまで元気に遊んでいたのに、ちょっと声がしなくなったと思ったらお風呂の中で浮いていたという事例があります。
お風呂は翌日になっても温かいので、プールや川でおぼれるよりも脳へのダメージが強いと言われています。
気をつけましょうというのは意味がないので、お風呂に行かないような手立てを考えることが大切です。
子どもが3歳を過ぎるまではお風呂の残し湯はしないほうがよいです。
今のお風呂はよいしょとまたがなくても入ることができるような形ですし、残り湯が30センチ、顔がつかる状態であれば溺れます。
大きな池のそばで子どもから目を離す人はいないと思います。
お風呂も池と同じ危険があると考えてください。
昔あった「おふろ浮き輪」はひっくり返って溺れてしまう赤ちゃんがいたので販売中止になりましたが、ネットで売られています。

■転倒、転落による事故

ベビーカーの事故が多いです。
ベルトをしているから安全ではなく、ベビーカーごとひっくり返ってしまうんですね。
お兄ちゃんが押して坂道でスピードが出てひっくり返って、赤ちゃんがこぶを作ったという事がありました。
シートベルトをしていたのでこぶですんだけれどそうでなければ投げ出されていたはずです。
自転車に子どもを乗せてそのまま転んでしまったというケースがあります。
非常に危険です。自転車を止めたら子どもも降ろすようにしてください。
子供を乗せたままにするのは危ないです。
三輪自転車の方が安全です。
ニュースで5階のトイレの窓から子どもが落ちたけれど助けることができたと聞きました。
思いがけないことが起きるのですね。
ベランダから落ちる事故も多いです。
ベランダに物を置いている場合、落ちる可能性が高くなります。
子どもはお母さんがベランダから下を見たり、手を振ったりしていると自分もしたくなります。
横にエアコンの室外機が置いてあったりしたら上りたくなりますよね。
ある意味子どもの発達上当たり前のことなのですが、でものぞいたら落ちます。
気をつけてではなく子どもが一人でベランダに行かない工夫も必要だと思います。

■遊具による事故

昔あった箱型ブランコが姿を消しました。
事故が多かったことが理由です。
遊具の事故は小学生低学年が多いですね。
かなり危険なことをするし、親の目がありません。
自転車に乗って遊びに来る子もいますが、ヘルメットをかぶって「うんてい」をしているうちにヘルメットの紐で首をつってしまったということがありました。
鍵を首にぶら下げてすべり台で遊び、引っかかってしまうという事があります。
近くに誰かいると気がついてくれるでしょうが、一人だとどうすることもできません。
とにかく首に物をかけるのは危険と覚えて下さい。
洋服もひらひらしているのを見ると危ないなと思ってしまいます。
自転車の車輪に絡まることも考えられます。
家で飼っている犬が赤ちゃんの睾丸を噛んだという例がありました。
犬にとっては赤ちゃんはミルクの匂いはするし興味の対象だという事を知っておいてください。


子どもの周りには思いがけない事故がたくさんあります。予防できることは行い手遅れにならないようにしてあげてください。
  [まとめ 川本泉美]