NPO法人 緑区子どもサポートセンター
   第25号 平成21年 3月

〜1歳児の発達と親子のかかわり方〜

                               臨床心理士 永松未生
「ぷらっとおゆみ野子育てリラックス館」で2月に行われた講演会の内容をお送りします。


■あかちゃんから幼児へ

赤ちゃんは無力な存在と言われていましたが、最近の研究から、外界に積極的に働きかける存在であることがわかってきました。
生後2ヶ月くらいになると、脳のアポトーシスが活発になり、視覚、聴覚、触角といった外界からの刺激に対して反応するようになります。
また、人の顔を好むという研究もあり、5ヶ月を過ぎるころから親しい人に対してよりほほえむことが始まります。
この頃から大脳皮質の発達が急速に進み、頭の中でイメージを作り始めます。いないいないばあを喜ぶのはこの頃です。
頭のイメージと目の前の出来事が一致して喜ぶのです。
8ヶ月過ぎた頃から「人見知り」が始まります。

エリクソンは乳幼児期に獲得すべき課題を「基本的信頼感」と呼んでいます。
親と子の適切な相互作用を通して、自分と自分を取り巻く環境に対して信頼できる感覚を身につけることです。
赤ちゃんの発する声やしぐさ、微笑などに対して、適切に親が反応することで赤ちゃんは自信をつけ、基本的信頼感へと繋がって行きます。
この事を獲得した子どもは、自信をもった情緒の安定した子となっていきます。
自分に自信があると意欲につながり、そこに体の準備が整うと、はいはい、歩行へと行動範囲が劇的に変化し、言葉の元が増えてきます。
1歳前後から移動とコミュニケーションを手に入れて、2歳の「いやいや」期、3歳の第一次反抗期を迎え、精神的自立の第一歩を踏み出すことになります。

人間は著しく成長する時に反抗を伴います。
反抗が激化するときには甘えも増えます。
親から離れて自分でしたい、でも不安、親に甘えるという繰り返しが起きます。
それに付き合わされる親は振り回されその理不尽さに手を焼きますが、著しい成長の過程であることを忘れないでください。

■規則正しい生活の大切さについて

赤ちゃんから幼児期の脳はすさまじい勢いで成長しています。
重さだけでも生まれたときの倍以上になります。
脳は大まかに脳幹、大脳辺縁系、大脳皮質の3つに分かれます。
脳幹は体の脳といわれ、ホルモンや体温の調節、反射、大脳辺縁系は心の脳と言われ記憶と情動に関係しており、楽しいことやうれしいことはより記憶され、嫌なことは忘れようと作用します。
一番表面の大脳皮質は認知機能や意識といった人間らしい部分と関連しています。
言葉やイメージなどはこの部分の発達が関与します。
まず体の脳が発達することで心の脳が出来上がるので、体の脳をしっかり築いておくことが大切です。
そのために大切なことは生理的欲求をきちんと満たすこと、睡眠と食欲です。
決まった時間に寝て起きて、食事をしてリズムを作ることが基本となります。
朝起きて朝日を浴びるとコルチコステロイドというホルモンが分泌されるのですが、一日のストレスに備えるホルモンで体のメンテナンスに必要です。
起きてから14時間たつとメラトニンが分泌され脳を鎮静させます。
1歳から5歳の間に多く分泌されます。
これは第二次性徴ホルモンを抑える役割をします。
初潮が早くなってきましたがこれは良いことではないのです。
このメラトニンは明るいと抑制されてしまうので、定時になったら部屋を暗くして眠りを誘うことが大切です。
いつまでも起きているとメラトニンが出ていいのかわからなくなります。
「メラトニンシャワーを浴びるとその後の成人病を予防する」との研究発表もあり、5歳までの努力が将来に影響を与えるといえます。

■あそびについて

子どもは遊びを通していろいろなことを獲得します。
それは体の成長であり、頭の成長であり、ストレスの発散であり、気持ちの整理です。
遊びはおもちゃを使うこともあれば、周りの大人に働きかけることもあれば、家の中のものに興味を持って遊ぶこともあるでしょう。
どこかに出かけて楽しい思いをさせてあげる事ではなく、子どもがそのときの興味で遊ぶことが重要です。
大人は子どもが何を楽しいと思っているのか分かりにくいし、退屈してしまいがちなので、じっくり付き合うのは難しいかもしれません。
子どもは自分に必要な刺激がわかっていて、それを選択しています。
たとえば、ブランコが大好きな子であればその刺激を今必要としているのです。
その遊びに十分付き合うことは必要なことです。

■テレビやビデオについて

アメリカの小児医学会はテレビの視聴は一日4時間以内にすることを提言しました。
4時間以上見ている子どもについては何らかの影響があるという訳です。
また家の中にテレビをつけている時間が8時間以上あることも同様の影響が考えられます。
テレビは一方的に子どもの注意をひきつけます。
特に2歳以下の子どもはひきつけられた注意を自分の意志で変えられないとの研究報告もあります。
必要なものを決められた時間見るようにしてください。

■育児ストレスについて

育児ストレスは誰にでもあるもの。
特に育児している時期の女性は妊娠、出産、授乳、更年期とホルモンの変化が激しい時期。
また生理周期もありホルモンの影響を受けやすく、うつ病やうつ症状に陥りやすいのです。
育児ストレスは個人差はあるものの皆感じているものです。
ストレスの種類を整理してみてそれを軽減、もしくはマネージメントする工夫をしてみてください。
大切なのは睡眠、食欲、意欲。
目をつむってみて開けるのがしんどい人は少し疲れがたまっています。
東洋医学やアロマまでの利用もお勧めです。

■先生に対しての質問の中から

子どもをつい叱ってしまう
危ないことをしたときには年齢が小さくても注意することが大切です。
言葉で言ってもわからない時期は体を止めます。そして繰り返し伝えます。
よく「早くしなさい」と言ってしまいますが、そうではなく「すわってくつをはいて」というように具体的に伝えましょう。
言っても聞かないときは伝わっていないと思って言い方を変えてみるのも良いでしょう。

食事を食べさせるのが大変
食べないからと言ってだらだら30分も食べさせているのだったら、両方ストレスになります。
量を考えて食べやすいものを少しずつとるようにしてみては。
かんしゃくをおこしたら一度食事をやめてみてください。

友達とけんかをする
1歳では仲良く遊ぶというのは大変なこと。
まず一人遊びができると言うことが大事です。
周りの子が目に入り一緒に遊びたいと思うのは3歳ごろになります。

夜寝ないのですが
寝かせるのは大変かもしれませんが、この今の努力が子どもの未来に関係してくると思って頑張ってみてください。
一日や二日でうまくいきません。一ヶ月単位で取り組みます。
まず朝は7時には起こして午前中は活発に動き回るような遊びをします。
昼ごはんは11時、その後は昼寝をします。
2時半に起こして夕方にかけては静かな遊びをします。
夜の7時には食事と入浴を済ませ、室内の電気を落としながら睡眠モードにもっていき8時には寝るようにします。
パパの協力も必要になりますね。寝かせようとしたところにパパが帰ってくると起きてしまうので、その時間を避けて帰ってきてもらうようにしてください。体のリズムをつけると言うことはとても大切なことなのです。